2012/05/03

Teacher

思いもかけない出会いからのお話

5年前くらい、帰省したときの電車で中学校の頃の美術の先生に出会い、
話しかけ住所交換をした。
先生が所属している会の展覧会が毎年新国立美術館で開かれるようで、
それ以来、招待券を送ってくれる。
嬉しい話、展覧会には時間を作って行く。


思えば、高校に入ってから、その先生がその中学校を辞めると聞き、
同じ地域に住む中学校の頃からの友達3人で絵を描いてプレゼントしたのだった。
そんなことも私はすっかり忘れていて、
先生との話でタイムカプセルを開けたかのようにそのことを思い出したのだった。 

先生は、中学校の時から変わっていた。
そのルックスからネズミ男などと呼ばれたりしていたけど、
中学生の我々をあざ笑うかのように、さらにアイロニカルに飄々としていた。
美術の時の話も他の先生なんかと違い、
斜に構えたその物言いはとてもおもしろかった。


国語、英語、理科、数学などの主要教科と同じように、
美術も筆記試験なんてのがあった。
当時のテストは、わら半紙に先生の手書きの問題が書いてある。
テストの時間に各教科の先生が教室に回ってくる、そのときのこと、
問題文の字がめちゃくちゃで読めない、ココはなんと読みますか、○行目の字が読めない、
などと一斉に生徒から質問攻めに合っていた。
さすがに担任の前での集中攻撃に半笑いでタジタジの先生。
実際、同学年の4クラス共そんな調子で、テストにならなかった。

次のテストからは他の教科からしたら異例の
どこからか引っ張り出した出来合いのカラープリントのテスト用紙になっていた。

その字は達筆でバランスのとれた美しい字。
少々読み難いが、私には全て読め、きれいと思っていた。
生徒からの質問攻めは、単なる面白がりの悪戯に思えた。
今でもこんな字は大好きだ。
わたしが描いた絵について核心をついた質問をしてきたりして、
中学生の私にはそんなネズミ男先生が洒落てみえた。

当時60歳近いから、今はもう結構な歳と思われる。
毎日海で写生しているという。

今年の絵は去年(写真、能生漁港)より、明るめに仕上げたとのこと
北の岬と題された絵は私には決して明るくは見えなかった。
先生の言う明るめという言葉の意味を、
漆黒の岸壁にわずかながら黄土が見えるその部分と
リズミカルに配置された白っぽい船からすくい上げた。
明るめという言葉は悪戯に斜に構えている。

北の岬はずっしりと重いけれど、わずかながらでも明るさを持ちたい


どうか長生きして、ほしいです



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